ー ヴィーキングフットウェアの歴史 ー
ヴィーキングの歴史は、1920年1月17日、北欧ノルウェー・アスキムの地で創業者ピーター・マティアス・ロウデがラバー工場を設立したことから始まります。
最初の製品は、地元農家の声に耳を傾けて生まれたクラシックなガロッシュ。雨や雪、泥といった過酷な環境下でも快適に履けるその靴は、多くの人々に支持されました。
やがてヴィーキングのブーツは、漁師、林業従事者、探検家にも広く愛用されるように。ぬかるみでもしっかり踏みしめ、岩場では安定感を発揮し、極寒の地でも快適さを保つ性能は高く評価されました。
創業から100年以上経った今も、ヴィーキングはラバーブーツだけでなくスニーカーなど多彩なフットウェアを展開。「地に足をつけて生きる」という創業者の想いを受け継ぎ、機能的で耐久性に優れた靴を作り続けています。
ブランド哲学
この想いは、ブランドロゴにも込められています。「ヴィーキング」という名前は、ノルウェー南東部・オスロ・フィヨルド周辺の「ヴィーケン地方の人々」を意味します。 長い歴史の中で「強く、たくましく、勇敢で、野心的」と語り継がれてきたこの名は、私たちのルーツであり、今もなおものづくりの根幹に息づいています。
1920年の創業時から受け継がれるこの信念は、これからもヴィーキングの歩みを支え続けていきます。
ヴィーキングは創業初期の段階からラバー製品開発のために優秀な科学者を雇用し、競合他社よりも優れたラバー製品の製造を可能にしました。その後ファッションやトレンドの変化により、1920年代後半にはガロッシュの生産は大きく減少し、スノーソックスと体操靴の生産が増加しました。ヴィーキングは徐々に生産を拡大していき、ラバーブーツやワークブーツ、レザーシューズやハンティングシューズ、サッカースパイクの製造を始めました。

1930年代、ヴィーキングはラバーブーツやワークブーツ、ガロッシュに加え、自動車用タイヤ、ラバー製の床材、階段用コーティング(これはノルウェー王宮などでも使用されていました)、湯たんぽやスクールバッグ、ラバー製の衣類や手袋、キャンプ用のマットレスや輪ゴムを製造していました。時を経て靴の製造に集中するという結論に至りました。1934年に工場が全焼。より効率的な新しい工場が建設され、ほどなくして生産数は1日あたり10,000足のガロッシュ、1,200足の靴、100本の自動車用タイヤ、500本の自転車用タイヤに増加。1,100人の従業員を抱えるヴィーキングは、当時ノルウェーで最大規模の職場のひとつでした。

1940年代には、生産はコンベアとチェーンを使用していました。当時はすべて手作業で行われており、コンベアは15~20人、チェーンは4人のオペレーターで構成されていました。ヴィーキングのスキーシューズの売上はかつてないほど好調で、人気のスキーブーツの広告では「温かく快適。優れたグリップ力のソールに抜群のフィット感。厳しい寒さの中でも潤滑油なしで快適な履き心地が持続する。」というセールスポイントが訴求されていました。

1950年代の初頭、ヴィーキングは完成したアッパーにアウトソールをプレスして底付けするさまざまなプレス機械を購入しました。この方法で製造された最初の靴はいわゆるウィークエンドシューズ、つまりプレス加工されたラバーソールを備えた軽量なシューズでした。この頃、ノルウェーは驚異的な成長を遂げていました。新しく建設されたダムから安価な電力が豊富に供給され、水へのアクセスにも制限が無かったため、国内の様々な場所に新しく産業会社が設立されました。ヴィーキングも、テキスタイルブーツやスリッパなどの新製品の生産を開始。ヴィーキングのサッカーシューズは、ノルウェーサッカー協会の指示で年齢別クラスで使用されていました。

1960年代半ばにはプラスチックの成形工場を購入。1969年にCherrox®︎ブーツを発表しました。ラバー製のViking Cherrox®︎のアイデアを考案したのはオットー・シュナイダーでした。この時、Cherrox®︎は本物の革のブーツのように見えたのです。新しいデザインと新しいプラスチックのブレンドは大成功を収め、アスキムの工場のキャパシティーでは生産が追いつかない状況となりました。そのため、1971年にオッタに別工場を設立し、その7年後に生産拠点をイギリスに移しました。この頃、10代の女の子は「Viking Lakk-lets(紐付きブーツ)」を履き、母親は「Pavlova」や「Tuscany(女性用ハイブーツ)」を履く人が多くなりました。※元々Cherrox(チェロックス)ブーツの名称は、ヴィーキングが開発した、ライニングに起毛素材を施したブーツの名称でしたが、現在の北欧では同様のスタイルの長靴を総じてCherroxブーツと呼んでいます。

「Rocky」と呼ばれるハイキングブーツは、1966年のサマーコレクションで発売されました。著名な登山家でありノルウェーのトレッキング協会(DNT)の理事でルート・インスペクターでもあるグンナー・ラーべは、このハイキングブーツを心底気に入り、「ラバー製のブーツは、手頃で防水という大きな利点があるにも関わらずまだ試したことがありません。そのため、新しいハイキングブーツ・Rockyとの出会いは、とても嬉しい驚きです。」と述べています。そのためハイキングブーツのRockyをはじめとするヴィーキングのブーツは、山でも森でも、ハイキングに出かけるときの頼もしい相棒となりました。このことが、ヴィーキングとノルウェートレッキング協会(DNT)との長期にわたるコラボレーションの礎となったのです。
60年代にはいくつかの定番商品が誕生しました。ヴィーキングのセーリングブーツは瞬く間に人気を博し、現在でも「Kadett」や「Seilas」は定番商品として多くの人々に愛用されています。
1971年、ヴィーキングはヴィーキング・アスキムという名称で再編成され、アスキム、ミェンダーレン、スタヴァンゲル、オスロ(国立ラバー工場)、ランゲヴォーグ(発泡ラバー工場)、ホックスンド、リューカンに工場を構えました。ホックスンドの工場(バルダーシューズの工場)ではレクレーション用の革靴を、リューカンではレクレーション用の布靴が生産されていました。当初、縫製されたアッパーがアスキムの工場に送られそこでアウトソールを底付けしていましたが、後に底付け用プレス機はリューカンの工場にうつされました。1970年代半ば、ヴィーキングは「Retro Trim」というスニーカーを発売し、瞬く間に大ヒット商品となりました。Retro Trimは、2020年のヴィーキング100周年に向けた初秋コレクションで復刻版として発表され、2020年6月に数量限定で販売されました。

サッカーシューズのViking Proffは、ほとんどのサッカー場で見かけるほど定番人気となり、後にジョー・ネスボ率いるノルウェーのロックバンド「Di Derre」がこのシューズに捧げる曲「Viking Proff」(1996年)を発表しました。
1972年から1973年にかけて、ラバーブーツの生産はマレーシアに新設された工場で行われる事となりました(それらは後に中国などにも移されました)。
ノルウェーのサッカー選手ドリロは、ヴィーキングブーツを履いている姿を頻繁に目撃されており、彼がヴィーキングのラバーブーツを履いてウェンブリー・スタジアムに入ると、英国人ジャーナリストが、その姿を二度見していたという逸話も残っています。ドリロは、ヴィーキングのラバーブーツのキャンペーンに「ワールドカップまでの道のりは、レザーオックスフォード紳士靴と葉巻ではたどり着けない」というスローガンと共に登場しました。
1984年、タイヤの生産部門は会社から分割され、スウェーデンのギスラベット社に引き継がれましたが、その後もヴィーキングタイヤの名称はそのまま残りました。ソウルで夏季オリンピックが開催された1988年、ヴィーキングはKadettブーツが1足売れるごとにノルウェーのオリンピック出場選手に一定額を寄付しより良いトレーニングの機会を提供することを決定しました。Kadettブーツの売れ行きは好調で、ヴィーキングは少なくとも150万ノルウェー・クローネを寄付することとなりました。

ヴィーキングは子どもたちのことを真剣に考えています。北欧の気候でも活発に遊ぶことが出来るように、さらに多くの靴を開発しました。 新しい生産方法と新しい素材や材料によって、私たちはさらに革新的な靴を生産することができるようになりました。1992年、ヴィーキングは靴にGORE-TEX®︎メンブレンを採用した最初の靴メーカーのひとつとなり、90年代半ばにはGORE-TEX®︎を使用したCrosserというハンティングブーツを発売しました。

ヴィーキングは「自然の法則に対する挑戦」を続けました。つまり、ノルウェーの厳しい自然環境にも対応できるフットウェアの開発を続けたのです。TV Norgeによって放送された「北緯 71度」というリアリティ番組に、ヴィーキングは公式サプライヤーとして頻繁に大人用ハイキングシューズを提供しました。

ヴィーキングは革新を続けました。GORE-TEX®︎を使用したハンティングブーツはさらに改良され、幼稚園や校庭はヴィーキングの靴を履いた子供たちで溢れていました。ヴィーキングは今も昔も変わらず、親が季節ごとに子どものために丈夫な靴を購入する際に信頼できるブランドとして選ばれています。

ヴィーキング・アウトドア・フットウェアは長い伝統を誇るブランドです。 靴が改良を重ね変化をしても、私たちの自然に対する愛情は決して変わることはありません。私たちは常にどの段階でも革新を目指し、お客様に最高の靴技術を提供できるように努めています。私たちは靴業界の先駆者であることに謙虚な誇りを持っています。子どもたちのシューズでもハンティングブーツでも、長年に渡って耐久性に優れた革新的なフットウェアを提供することで、天候や地形と共存する製品を作り続けてきました。2020年にヴィーキングは100周年を迎えましたが、ノルウェーで最も古いブランドの一つとしてノルウェーの産業史に貢献してきたのです。

PHOTO FROM THE VIKING







