ヴィーキングを履く。ヴィーキングと暮らす。

稲数麻子

LIFE STYLE | March 04, 2026

《VIKING(ヴィーキング)》と親和性のある方々のライフスタイルに迫る連載企画。今回は、空間デザイナーの稲数麻子さんを訪ねました。昨年、夫とふたり、築50年ほどのヴィンテージマンションに引っ越したばかりだとか。「愛着がもてる」「美しさ」をできる限り追求したいとリノベーションをほどこした空間で、キッチンやディスプレイなどを見せていただきました。

With “Anaconda Light 5 Low GTX BOA”

ヴィンテージのドレスに軽やかさをトッピングするのは、
“アナコンダライト 5 ロー ゴアテックス ボア”

愛犬の少し後ろから、やさしく声を掛けながら歩く。サイドフェイスのかかとあたりにグレーをあしらった“Anaconda Light 5 Low GTX BOA(アナコンダ ライト 5 ローゴアテックス ボア)”が、まるでヒール靴のようにも見え、美しいドレスとよく似合う。

「急に立ち止まってどうしたの?」と笑う、稲数さん。「なるべくこの子の気分に合わせて、お散歩しています。反対にとつぜん少しスピードを上げて小走りになるなんてことも。このスニーカーなら、グリップ力があるので、滑りそう、転びそうなんてことになりません」ソールはミシュラン社製。

ノーズがやや長め、きれいな見た目。

クッション性に優れたEVAミッドソールが内蔵されているので、歩行中の衝撃を吸収。長時間歩行しても、足裏が疲れにくい。歩いているさなかのブレを軽減する設計なので、安定感も抜群だ。

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思い切ってそれまでの賃貸暮らしをやめて、気に入ったマンションを手に入れた稲数麻子さん。選んだのは昭和の時代に建てられたヴィンテージマンションだ。比較的緑が多く残り、低層住宅が並ぶエリアに立つ。

空間づくりを生業(なりわい)とする稲数さんの新居と聞けば、インテリアを拝見したい気持ちは止められるわけもなく……。ご自宅にうかがわせていただいた。

その日、最寄り駅に少し早く着いたこともあり、ご自宅に向かう途中で、愛犬とウォーキング中の稲数さんと遭遇した。
稲数さんは一点ものじゃないかと思える、ヴィンテージの美しいロングドレスを纏っていることが多い。この日もそう。多色づかいのさまざまな柄が縦に並んだ、ストライプ調のパフスリーブが、冬にしては少し暖かい空気によく映えて、遠目にもすぐに「彼女だ」とわかる。

足元で抜け感をつけているのは、《VIKING(ヴィーキング)》の白いスニーカー。黒でもいいところ、あえて白を選ぶと、急に春を呼び込むような軽やかなムードになる。トコトコと歩いては戻り、また歩く愛犬をいとおしそうに眺めながら、歩調を合わせ、トットットッと、白いスニーカーが弾む。

最近はたとえばウエディングのようなセレモニーの日に、スーツやワンピースに合わせ、ぴかぴかの白いスニーカーを履く人が増えたものだと、そんなことを思い出した。

カウンターの天板に採用したのは、
イタリア製のピンクの人造大理石

コンロの奥の壁にはグレーのタイルを貼った。色ムラに味がある。カウンターのピンクとも相性がいい。

鏡面のようにつややか。気に入ったものに囲まれながらの料理はじつによくはかどるもの。

冷蔵庫の横の引き戸の中には、ウォーターサーバーをしまう。

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「ちょうど家の中央に位置するキッチンは、リノベーションの中でもかなりこだわったスペースです。夫も私も料理が好きでふたり同時に立てるよう、広めにしました。

何となく頭の中にイメージしていたのは、よくお菓子作りをした、実家のキッチン。カウンターにぐるりと囲まれた空間で、使い勝手がとてもよかったんです。
それで、この家のキッチンもそのスタイルにならうことに。カウンターを壁付けで完結させず、L字にしました。

友人がよく遊びにくるので、カウンターを挟んでダイニングにいる彼らとおしゃべりしながら、料理を楽しむことも多いです」

ピンクの天板に目を奪われる。そう伝えると、「どうしてもこの人造大理石を使いたかったんです」と稲数さん。“ロッソ・ベローナ”というイタリア製の人造大理石だそうだ。一枚板を使いたかったものの、さすがに手を出せる金額じゃなかったそう。かわりに見つけた40㎝×40㎝のタイルタイプを繋ぐことにした。

「タイル状のものだと目地が入ってしまい、掃除の手間が増えます。でもそれを超える魅力がありました。これから長く住むことになる家の中のこと。『好き』を諦めるべきではないなって、思ったんです」

一般的に、特に油や水がはねるキッチンは、掃除のしやすさを優先し、シームレスな素材が選ばれることが多い。

「機能的であればそれにこしたことはありません。ただ、美しさや愛着がもてるものがいつもそばにあることこそが心地よさじゃないかという思いが、どうしても拭い去れなかった。あとは、がんばってこまめに掃除するのみですよね(笑)」

「流行っているから」「あの人が着ているから」より
「気持ちよく一歩を踏み出せるか」を大切に選ぶ

左/カウンターのピンクと相性のいい、赤やブルーの道具やいれものが並ぶ。どれも乾いたような色味に温もりを感じる。
右/買ってきた野菜を冷蔵庫にしまい込むのではなく、オブジェのように飾ることを楽しむのが稲数流。アイスクリームグラスに房を分けたニンニクを散らすように入れただけでも、見た目に華やか。

「友人の来訪に備えて多めにそろえているとはいえ、改めてみると、我が家のカトラリーの量、多すぎですね(笑)」

左/カウンター下の引き出しには皿やふきんなども入る。
右/カレーをよく作ることもあって、スパイスをたくさん揃えている。

コンロに向かって立った左手の収納棚には扉はなし。開ける閉めるのアクションをなくすだけで、作業効率は上がる。

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実は稲数さん、本来、好きなものは目につくように出して飾っておきたいタイプ。でも、これまでの経験から、「キッチンは特に生活感が出やすいから、できるだけ収納を設けることにした」と話す。どこに何を入れるかをあらかじめ決めて、引き出しなどの寸法も細かく施工会社に依頼したというから驚く。

「一日に何度も使うようなもの、火を使いながらパッと手を伸ばしたところにあったほうが便利なものなどはカウンターの上にセット。それ以外は、引き出しの中です。私的には、見せると見せないのバランスがちょうどいい塩梅になったと、満足しています」
「美しいものを囲まれて過ごす」「感性がよろこぶものを選ぶ」「自分が使いやすい、心地いいもの選びをする」という姿勢を大切にしていることがよくわかる、稲数さんの暮らし。

《ヴィーキング》を履き、愛犬と歩く姿を思い出して、「流行っているから」「あの人が着ているから」より「気持ちよく一歩を踏み出せるか」「車に乗るよりも、歩き続けたくなるか」「何年経っても好きでいられるか」を軸に纏うものを選ぶ人に違いない、そんなふうに想像した。

PROFILE

ASAKO INAKAZU

空間装飾や店舗のデザインなどを手掛ける「studio PSHKE」を夫でプロジェクトマネージャーの髙橋智也とともに主宰。出版物や独自の視点でデザインしたプロダクトブランド《peripateo》を準備中。プロダクトをリリースする「PHILOSOPHIA」としての活動も行っている。
ASAKO INAKAZU

photo:MEGUMI direction,edit&text:MARIKA NAKASHIMA